2005年7月9日の事故について

2005年7月9日、第3回フリーダイビング日本選手権において、運営委員の一人でありサポートのスクーバダイバーとして参加していた高原与治さんが、競技中に行方不明となり現在もまだ発見されていません。

関係者の方々、捜索に御協力いただいた方、選手の皆さんへは多大なるご心労、ご迷惑をおかけしたことを心よりお詫び申し上げます。

今後は安全面について、現状を全面的に見直し、安全を十分確保した上で本来のフリーダイビング競技が開催できる様、各方面のご指導をいただきながら検証していきたいと思います。

ご理解とご協力の程よろしくお願いします。

JAS/AIDA JAPAN会長 須川 浩司

2005年7月9日の事故の状況について

7月9日の事故について、当日の状況についてここに書き記します。
(推測による事柄はさけ、事実のみを書き出したつもりです)

2005年7月9日(土)、10日(日)の2日間の予定で、第3回フリーダイビング日本選手権が開催されました。競技のルール上、深い選手から順番に行う事、2日間にわけて開催される事になっていました。
選手の深度申告は9日朝の登録時に行うことになっており、その結果、9日の最大深度はー70m、選手数は8人、と決定しました。

競技には、競技会場となる競技船、セキュリティのスクーバダイバー・サーフェイスダイバーを中心としたセキュリティ船、選手とサポートを搬送する選手船の三隻を使用しました。
出港時間はそれぞれ決められており、ほぼ定刻どおりに出港しました。

競技の開始時間もあらかじめ決められており、12時30分が最初の選手のオフィシャルトップ(競技の開始時間)、それ以降は8分きざみで競技は進んでいく予定でした。

セキュリティ担当のスクーバダイバーは全部で6人でした。そのうち3人はリブリーザーを使用し、-50m以深での担当となるディープダイバーでした。
行方不明となっている高原与治さんを含む3人は、リブリーザートレーニングを十分に積み、またフリーダイビングの大会でのセキュリティ経験も多くあるダイバーでした。
高原さんは経験年数18年、経験本数約2000本のベテランダイバーで、ダイブマスターの資格を持っていました。その他の3人はシングルタンク(12リットル)を使用し、MAX-25mの中層を担当し、またそのうち1人は前述の3人のディープダイバーの減圧中のウォッチング役として配置しました。

スクーバの6人の持ち場もそれぞれ決められており、自分の担当の時間にそれぞれエントリーしていく計画でした。高原さんは4人目の選手の中層が最初の担当でしたので、3人目の選手の競技終了した頃にエントリーを開始しています。この時、何人かのダイバーとすれ違っています。

高原さんの担当は4、5人目は中層、6~8人目までがボトムの担当の計画でした。トータルの潜水時間の計画は、減圧停止を含め87分の予定でした。5人目の競技が終了後、それまでのボトム担当ダイバーが浮上を開始し、-40m付近で高原さんとすれ違いました。このときはアイコンタクトも取り、特に問題はありませんでした。
その後、浮上を開始したダイバーが高原さんが持ち場であるー51m付近まで潜降していったのは上から確認しています。高原さんの姿が最後に確認されたのはこの時でした。

6人目の選手が潜降したとき、ボトム付近で高原さんの姿は確認できなかったそうです。しかし、競技の性格上、選手の視野は極端に狭くなっており、よほど真正面にいなければ視界に入ってくるかどうかは難しく、そのためそこに既にいなかったのか、あるいは視界に入らなかっただけなのか、は現状ではわからなくなってしまっています。

6人目の選手の競技終了後、7人目の選手の準備中、船が潮流により移動し、本来の競技深度より水深が浅くなってしまいました。その影響もあり、競技ロープが何かしらに引っかかってしまい、そのため、13時20分頃、競技を中止とする宣言が出されました。この事は水中にいるダイバーに対しては水中無線機を通して伝えられました。

もともとの計画では、高原さんは13時50分頃には船上からでも目視確認できるー6m付近まで浮上し、その後14時10分頃に水面に浮上の予定でした。しかしその時間になっても高原さんの姿が見えず、そのため水面に待機していたウォッチング担当ダイバーが周辺を探しましたが、見つかりませんでした。また、別の人の撤収作業のため周辺にいたゴムボートで水面を捜索(漂流などの場合はシグナルフロートを上げる手筈でした)しましたが、やはり見つかりませんでした。そのため、船上のスタッフから、本部の方へ連絡し、海上保安庁・警察・消防等に通報、捜索を開始しましたが、特に手がかりとなるものは見つけることができませんでした。

事故現場地図

×印の部分が最終的に船がいた現場です。その右側に小さく見えるのがナジマと呼ばれる大きな岩です。

文責:須川浩司 (Japan Apnea Society/AIDA Japan)

2012.7.10

このほど、下記の二つの資料を作成・公開しました。 これらはjas理事会にて協議を重ね、作成に至ったものです。 今後はこれらの資料を活用しつつ、安全に対する体制を高めていきたいと思います。 ただしこれらの資料も今後実践の場で更によいものにしていきたいと考えています。